スポーツの現場でも、介護やリハビリの現場でも、「コンディショニング」という言葉はよく使われます。ところが、同じ言葉が「体を鍛えること」の意味で使われたり、「けがからの回復」の意味で使われたりして、話している人どうしで指しているものが違うことが少なくありません。言葉がずれたままだと、誰が、何を目的に、何を記録するのかが決まらず、取り組みの振り返りもできなくなります。
この記事では、コンディショニング・トレーニング・リハビリテーションの三つを、公的機関や学会の説明をもとに分けて整理します。そのうえで、コンディションを把握するときに何を記録すればよいかを、身体の測定だけでなく、反応や判断の観点も含めて考えます。
この記事で使う三つの言葉の意味
最初に、この記事での言葉の使い方を決めておきます。いずれも分野や団体によって表現に幅があるため、ここでは一次情報で確認できる説明を土台にしています。
- コンディショニング
- 目的(試合、仕事、日常生活など)に向けて、いまの状態を把握し、望ましい状態へ調整していくこと。国立スポーツ科学センターの研究員は、試合で勝つために重要な要因の現状を把握し、望ましい状態に向けて調整していくことと説明しています。
- トレーニング
- 体力や技術など、能力そのものを高めるために、計画的に負荷をかける取り組み。この記事では、能力の水準を引き上げることを主な目的とするものをこう呼びます。
- リハビリテーション
- 疾患やけがによって生じた機能障害の回復を促し、生活や社会での活動・参加を支える取り組み。医療としてのリハビリテーションは、医師や理学療法士・作業療法士などの専門職が担います。
- リコンディショニング
- けがや病気などで崩れた状態を、もとの活動に戻れる状態へ整え直すこと。スポーツの現場では、医療としての治療やリハビリテーションを経たあと、競技に戻るまでの過程を指して使われることがあります。
ここで大切なのは、コンディショニングが「何かを鍛えること」そのものではなく、「状態を把握して整えること」に重心を置いている点です。鍛えることも整える手段の一つですが、休むこと、栄養や睡眠を見直すこと、練習の量を減らすことも、同じくコンディショニングに含まれます。
トレーニング・リハビリとの違いを一覧で比べる
三つの違いは、目的・対象となる人・主な担い手・記録の重心の四つで比べると整理しやすくなります。実際の現場では重なり合う部分も多いため、境界線を引くための表ではなく、いまの取り組みがどこに重心を置いているかを確かめるための表として使ってください。
| 観点 | コンディショニング | トレーニング | リハビリテーション |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 目的の日・場面に向けて、状態を把握し整える | 体力・技術などの能力を高める | 疾患やけがで生じた機能障害の回復と、活動・参加を支える |
| 対象となる人 | 競技者、働く人、高齢者など、日々活動しているすべての人 | 能力を高めたい人 | 疾患やけがにより、機能や活動に制限が生じている人 |
| 主な担い手 | 本人、指導者、トレーナー、介護職員など | 本人、指導者、トレーナー | 医師、理学療法士、作業療法士などの医療職 |
| 時間の単位 | 日・週の単位で変化を追う | 週・月の単位で計画する | 回復の段階に合わせて計画する |
| 記録の重心 | 主観(疲れ・痛み・気分)と客観(測定値)の推移 | 負荷の量と、能力の測定値 | 医療職が行う評価と、日常生活での動作 |
リハビリテーションについては、公的な定義がいくつかあります。世界保健機関(WHO)は、健康状態にある人が環境との関わりの中で機能を最適化し、障害を減らすための一連の介入と定義しています。日本リハビリテーション医学会は、リハビリテーション医学を、疾患・外傷・病態により生じた機能障害の回復を促し、残った障害を克服しながら人々の「活動を育む」医学と説明しています。いずれも、体の機能だけでなく、生活や社会への参加までを視野に入れている点が共通しています。
医療としてのリハビリテーションには、法律上の枠組みもあります。理学療法士及び作業療法士法は、理学療法を「身体に障害のある者」に対して「基本的動作能力の回復」を図るために運動や物理的手段を用いることと定め、理学療法士は医師の指示の下に理学療法を行うとしています。けがや病気の回復過程にある人に対して、どこまでを医療の領域とし、どこからをコンディショニングとして扱うかは、この枠組みを踏まえて医療職と相談して決める必要があります。
コンディションを形づくる要因——体力だけではない
コンディションという言葉からは、筋力や持久力、疲労といった体の状態が思い浮かびがちです。しかし、国立スポーツ科学センターの研究員は、コンディショニングの対象となる要因として、体力やスキルなどの身体要因に加えて、メンタルヘルスなどの心理要因、戦略や戦術を練るための情報要因、競技が行われる場所の環境要因を挙げ、多岐にわたると説明しています。
- 身体要因:筋力、持久力、柔軟性、疲労、痛み、睡眠、体重など
- 心理要因:気分、意欲、不安、集中の続きやすさなど
- 情報要因:対戦相手や課題についての知識、作戦、手順の理解など
- 環境要因:気温・湿度、移動、時差、設備、職場や施設の状況など
当社は、これらの要因に加えて「見て、気づき、判断し、動く」という一連の過程も、コンディションの一部として見ることを提案しています。たとえば、睡眠が足りない日や疲れがたまっている日は、筋力の値は普段と変わらなくても、合図に気づくまでの時間が遅くなったり、判断の誤りが増えたりすることがあります。反応の速さには、刺激が一つのときの単純反応、複数の刺激から選ぶ選択反応、反応するかどうかを決めるGo/No-Go課題などの種類があり、それぞれ見ているものが違います(詳しくは反応時間の種類と違いで整理しています)。
反応や判断を「認知機能」の一部として捉える考え方は、認知機能を注意・反応・判断・記憶に分けて考える記事で詳しく説明しています。コンディショニングの文脈では、反応や判断を鍛える対象としてだけでなく、日々の状態を知るための手がかりの一つとして記録に加えられる、という点を押さえておくとよいでしょう。
状態を把握する——主観と客観の記録を並べる
コンディショニングは、現状の把握から始まります。把握のしかたは、大きく主観的な記録と客観的な記録の二つに分けられます。どちらか一方だけでは見落としが出るため、両方を並べて記録し、変化の向きが一致しているかを確かめるのが基本です。
- 主観的な記録:疲れ、痛み、睡眠の満足度、気分、やる気などを、本人が毎日同じ尺度で記入する
- 客観的な記録:体重、安静時の心拍数、跳躍や握力などの体力測定、反応時間や判断の正確さなどを、同じ条件で測る
- 活動の記録:練習や作業の量、休みの日、移動や環境の変化など、状態に影響する出来事を書き留める
客観的な記録を使うときは、測定値そのものを信じてよい条件を確かめておく必要があります。同じ人を同じ条件で測ったときに値がどれくらいばらつくのか(信頼性)、その測定が本当に知りたいものを測っているのか(妥当性)は、測定の信頼性と妥当性で整理しています。また、同じ課題を繰り返すと慣れによって成績が上がる「練習効果」もあるため、短い期間での数値の上下を、すぐに状態の変化と読まないことが大切です(練習効果とは)。
記録の目的は、点数をつけることではありません。たとえば「主観では疲れを感じていないのに、反応の速さがいつもより遅い」「痛みの記入が続いているのに、練習の量が減っていない」といったずれに気づき、指導者や医療職と相談するきっかけをつくることです。一回の値で判断せず、その人の普段の値と比べて推移を見ることで、変化に気づく手がかりになります。
現場ごとのコンディショニングと、測定の位置づけ
コンディショニングの考え方は、競技者だけのものではありません。対象となる人と目的によって、記録する内容や関わる人は変わります。
- 競技者:試合の日に向けて、練習量と回復のバランスを整える。けがからの復帰期には、医療職の判断を受けて、競技に必要な動きや判断の状態を確かめる
- 介護・高齢者施設:日々の体調や気分の変化に合わせて、運動の内容と量を調整する。続けられる形で体と頭を使う機会をつくり、その記録を家族や関係者と共有する
- 働く人:睡眠や疲労、交代勤務などによる状態の変化に気づき、作業の配置や休憩のとり方を見直す材料にする
当社の REAXION は、光などの刺激に反応して体を動かす課題を通じて、反応・判断・動作の過程を測定し、記録として残すシステムです。アスリート向けの REAXION Pro は、刺激を見てから動き出すまでの過程を分解して測定し、シーズンを通した推移を記録できます。介護施設向けの REAXION Care は、座位でも実施できるなど体の状態に応じて難易度を調整でき、個人の推移をグラフで確認できます。
一方で、REAXION は医療機器ではありません。けがや病気の診断、治療、回復の判定を行うものではなく、リハビリテーションの効果を約束するものでもありません。医療としてのリハビリテーションを受けている人に使う場合は、主治医や理学療法士などの医療職の方針に沿って、日々の状態を記録して確かめる材料の一つとして扱ってください。
よくある質問
- コンディショニングとトレーニングは何が違うのですか。
- 重心の置き方が違います。トレーニングは体力や技術などの能力そのものを高めるために計画的に負荷をかける取り組みで、コンディショニングは目的の日や場面に向けて、いまの状態を把握し望ましい状態へ整えていく取り組みです。トレーニングはコンディショニングの手段の一つですが、休むことや睡眠・栄養を見直すこと、練習量を減らすこともコンディショニングに含まれます。
- コンディショニングとリハビリテーションは何が違うのですか。
- リハビリテーションは、疾患やけがによって生じた機能障害の回復を促し、生活や社会での活動・参加を支える取り組みで、医療としてのリハビリテーションは医師や理学療法士・作業療法士などの医療職が担います。コンディショニングは、けがや病気の有無にかかわらず、日々活動しているすべての人が対象です。けがからの復帰期には両者が重なるため、どこまでを医療として扱うかは医療職と相談して決めます。
- リコンディショニングとは何ですか。
- けがや病気などで崩れた状態を、もとの活動に戻れる状態へ整え直すことを指す言葉です。スポーツの現場では、医療としての治療やリハビリテーションを経たあと、競技に戻るまでの過程を指して使われることがあります。どの段階で何を再開するかは、医療職の判断を受けて決めます。
- コンディションを把握するには、何を記録すればよいですか。
- 主観の記録(疲れ、痛み、睡眠の満足度、気分)と、客観の記録(体重、安静時の心拍数、体力測定、反応や判断の測定など)を並べて記録するのが基本です。客観の測定は同じ時間帯・同じ条件で行い、一回の値ではなく、その人の普段の値と比べた推移で見ます。主観と客観の変化の向きがずれているときが、相談のきっかけになります。
- REAXION はリハビリテーションに使えますか。
- REAXION は医療機器ではなく、診断や治療、回復の判定を行うものではありません。医療としてのリハビリテーションを受けている人に使う場合は、主治医や理学療法士などの医療職の方針に沿って、反応・判断・動作の状態を記録して確かめる材料の一つとして扱ってください。
出典
関連するサービス




