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Occupational Safety

大股で2歩歩いて、身長で割る。測るのは簡単です。ただし出てきた数字は、何と比べるかで意味が変わります。

労働安全衛生

2ステップテストは、できる限り大股で2歩歩き、その歩幅を身長で割って数値にするテストです。必要なのは巻尺と滑りにくい床だけで、1人あたり数分で終わります。手軽さから、職場の体力チェックでもよく使われています。

厚生労働省の「高年齢者の労働災害防止のための指針」について定めた通達(令和8年2月10日付け基発0210第1号)は、体力チェックの方法の一つとして「転倒等リスク評価セルフチェック票」を別添3として挙げており、その1項目めが2ステップテストです。つまり、職場で実施する根拠のある測定項目です。

ところが、出た数値をどう読むかは、思ったほど単純ではありません。このテストには由来の異なる2つの物差しがあり、同じ数値でも評価が変わります。この記事では、実施方法を手順として確認したうえで、2つの物差しを並べ、最後にこのテストで分かること・分からないことを整理します。

何を測るテストか——「歩く」という水平方向の移動機能

2ステップテストは、日本整形外科学会が2013年に発表した「ロコモ度テスト」を構成する3つのテストの一つです。ロコモ度テストは、立ち上がりテスト(下肢筋力を調べる)、2ステップテスト(歩幅を調べる)、ロコモ25(身体状態・生活状況を調べる)からなります。

学会は臨床判断値の策定背景として、移動機能低下の早期発見には「立つ」「歩く」という機能に注目することが重要だと述べています。「立つ」は身体を垂直方向に移動する機能、「歩く」は水平方向に移動する機能であり、2ステップテストが受け持つのは後者です。歩幅は下肢の筋力だけでなく、バランスを保ちながら身体を前へ送り出せるかを反映します。

職場の文脈で言えば、通達は体力チェックの範囲を「歩行能力等の筋力、バランス能力、敏捷性等の労働災害に直接的に関与するもの」とし、事業場の実情に応じて全身持久力、感覚機能や認知機能等を含めて差し支えないとしています。2ステップテストは、このうち歩行能力と筋力にあたる項目です。

実施方法——手順と、結果を左右する注意点

日本整形外科学会が運営する「ロコモ ONLINE」が示す手順は次のとおりです。

  1. スタートラインを決め、両足のつま先を合わせて立つ。
  2. できる限り大股で2歩歩き、両足を揃える。バランスを崩した場合は失敗とする。
  3. 最初のラインから着地点のつま先までを測り、2歩分の歩幅とする。
  4. 2回行い、成績が良かったほうの記録を採用する。
  5. 「2歩幅(センチメートル)÷ 身長(センチメートル)」を計算し、2ステップ値を出す。

注意点として挙げられているのは、介助者のもとで実施すること、滑りにくい床で行うこと、準備運動を行うこと、バランスを崩さない範囲で行うこと、そしてジャンプは厳禁であることです。通達も、体力チェックを行う場合には対象者の状況に応じて高負荷にならないよう安全に十分配慮する必要があるとしています。測定そのものが転倒の機会にならないよう、場所と付き添いを先に決めておくことになります。

最後の点は指針が明示的に求めているところです。体力の状況の把握に当たっては、個々の労働者に対する不利益な取扱いを防ぐため、本人の同意の取得方法や情報の取扱方法等の事業場内手続を、安全衛生委員会等や労働者の意見を聴く機会等の場を活用して定める必要がある、と書かれています。

読み方その1——ロコモ度(日本整形外科学会の臨床判断値)

一つめの物差しは、日本整形外科学会が定める臨床判断値です。2015年にロコモ度1とロコモ度2が、2020年9月にロコモ度3が追加されました。2ステップ値による区分は次のとおりです。

区分2ステップ値学会による段階の説明
ロコモ度11.1以上1.3未満移動機能の低下が始まっている状態。運動を習慣づける必要がある段階
ロコモ度20.9以上1.1未満移動機能の低下が進行している状態。整形外科専門医の受診が勧められる段階
ロコモ度30.9未満移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態

押さえておきたいのは、この判定が年齢に関わらず適用されることです。学会は「年齢に関わらず、これら3項目のうち、ひとつでも該当する場合」にその段階と判定するとしています。また、ロコモ度テストは立ち上がりテスト・2ステップテスト・ロコモ25の3つで構成され、最も進行している段階を判定結果とします。2ステップテストだけで「ロコモ度」が確定するわけではありません。

読み方その2——職場の体力チェックでは5段階

もう一つの物差しが、通達の別添3「転倒等リスク評価セルフチェック票」です。こちらは2ステップ値を5段階で評価します。

評価12345
2歩幅÷身長〜1.241.25〜1.381.39〜1.461.47〜1.651.66〜

このチェック票は、2ステップテスト(歩行能力・筋力)のほか、座位ステッピングテスト(敏捷性)、ファンクショナルリーチ(動的バランス)、閉眼片足立ちと開眼片足立ち(静的バランス)の5項目を同じ5段階で評価し、レーダーチャートに落とす作りになっています。医学的な段階判定ではなく、本人の気づきを促し、項目間のバランスを見るための相対評価です。

2ステップ値を横軸にとり、日本整形外科学会のロコモ度による区分と、厚生労働省の通達別添3による5段階評価を上下に並べた図。ロコモ度の境目は0.9と1.1と1.3にあり、5段階評価の境目は1.24と1.38と1.46と1.65にあって、両者の区切りは一致していない。1.25から1.29の範囲は、職場の評価では2段階目だが、臨床判断値ではロコモ度1に該当することを示している。
同じ2ステップ値でも、当てる物差しによって位置づけが変わる。境目は一致していない。

2つの物差しを並べると、区切りが一致していないことが分かります。たとえば2ステップ値1.27は、職場のチェック票では5段階の2番目にあたり、下から2つ目とはいえ中間寄りに見えます。一方、臨床判断値では1.3未満なのでロコモ度1に該当します。どちらの物差しで説明するかによって、本人が受け取る印象は変わります。

指針は、体力チェックの評価基準を設ける場合には「高年齢者が従事する職務内容等に照らして合理的な水準に設定」することを求めており、通達も評価に当たっては「仕事内容に対して必要な能力等が有るかという観点」に留意する必要があるとしています。つまり職場で使う基準は、既成の区分をそのまま持ち込むのではなく、その作業に必要な水準から決めるべきものとされています。逆に評価基準を設けない場合は、指針は「高年齢者の気付きにつなげる」ことと、業務に従事する上で考慮すべきことを検討する際に活用することを挙げています。

分かること、分からないこと

2ステップテストで分かるのは、身体を水平方向に送り出す能力の現在値です。手軽で、繰り返し測っても負担が小さく、本人にも結果が分かりやすいという利点があります。一方で、このテストが扱わない領域もはっきりしています。

通達が示す体力チェックの範囲と、別添3の5項目の対応を示した図。労働災害に直接的に関与するものとされる筋力・バランス能力・敏捷性は、2ステップテスト、ファンクショナルリーチ、閉眼片足立ち、開眼片足立ち、座位ステッピングテストで埋まっている。全身持久力は、2月25日通達の別添2に評価方法が別に示されている。一方、感覚機能と認知機能には、このチェック票に対応する項目が置かれていない。
別添3の5項目は、筋力・バランス能力・敏捷性を埋める。感覚機能と認知機能は、別の測定で補う必要がある。

通達が挙げる体力チェックの範囲のうち、別添3の5項目が埋めるのは筋力、バランス能力、敏捷性です。全身持久力については、この通達を補足する令和8年2月25日付け基安安発0225第2号が、別添2として評価方法(質問票と簡易体力測定)を別に示しています。そして、事業場の実情に応じて含めて差し支えないとされる感覚機能と認知機能には、このチェック票に対応する項目がありません。

この違いは、転倒がどう起きるかを思い出すと理解しやすくなります。床の濡れや段差に「気づく」、避け方を「判断する」、身体を「動かす」という連鎖のうち、2ステップテストが測っているのは最後の「動かす」段階です。厚生労働省が高齢者の労働災害の発生原因として挙げる回答のなかに「気持ちが先走り体がついて行かなかった」というものがありますが、これは判断と動作のあいだのずれを指しており、歩幅の測定では捉えられません。

したがって、2ステップテストは職場の体力チェックの出発点として適していますが、それだけで転倒のリスクを把握したことにはなりません。指針が考慮すべき特性として筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能及び認知機能の低下等を列挙している以上、歩幅の数値は6つのうちの一部を埋めたにすぎない、という位置づけで扱うのが実態に合います。

  • ※ 本記事は2026年9月時点の公開情報にもとづいています。ロコモ度の臨床判断値は日本整形外科学会が公表したもの、5段階の評価表は「高年齢者の労働災害防止のための指針」について(令和8年2月10日付け基発0210第1号)の別添3によります。
  • ※ 同じ「転倒等リスク評価セルフチェック票」は、2026年4月1日に廃止された旧ガイドラインでは別添2として示されていました。現行の通達では別添3として引き継がれています。
  • ※ ロコモ度の判定は移動機能の段階を示すものであり、事業場で行う体力チェックは診断ではありません。痛みを伴う場合や医学的な判断が必要な場合は、産業医等の専門職や整形外科専門医にご相談ください。
  • ※ 測定は身体や認知の状態を数値として把握するためのものであり、転倒の予防や身体機能の改善を保証するものではありません。

よくある質問

2ステップテストは何を測るテストですか。
できる限り大股で2歩歩いた歩幅を身長で割り、身体を水平方向に移動させる能力を数値にするテストです。日本整形外科学会のロコモ度テストを構成する3つのテストの一つで、歩幅を調べる項目にあたります。厚生労働省の通達では、体力チェックの方法として挙げられている「転倒等リスク評価セルフチェック票」(別添3)の1項目めに置かれています。
2ステップ値がいくつなら問題があると考えればよいですか。
物差しが2つあります。日本整形外科学会の臨床判断値では、1.3未満でロコモ度1、1.1未満でロコモ度2、0.9未満でロコモ度3とされ、年齢に関わらず適用されます。一方、通達の別添3では5段階で評価し、最も低い区分は1.24以下です。両者の区切りは一致しないため、どちらの基準で説明しているのかを明示することが必要です。なお指針は、職場で評価基準を設ける場合は従事する職務内容に照らして合理的な水準に設定するよう求めています。
職場で実施するとき、何に注意すればよいですか。
滑りにくい床で、介助者のもとで行い、準備運動をしたうえで、バランスを崩さない範囲で実施します。ジャンプは厳禁で、バランスを崩した場合は失敗として扱います。通達も、対象者の状況に応じて高負荷にならないよう安全に十分配慮する必要があるとしています。あわせて、結果の取扱いについて本人の同意の取得方法や情報の共有範囲を、安全衛生委員会等の場を活用して事前に定めておく必要があります。
2ステップテストだけで、転倒のリスクは把握できますか。
把握できる範囲は限られます。指針が考慮すべき特性として挙げるのは筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能及び認知機能の低下等の6つですが、2ステップテストが対象とするのは歩行能力と筋力です。別添3の5項目を揃えても、埋まるのは筋力・バランス能力・敏捷性までで、感覚機能と認知機能には対応する項目がありません。危険に気づき、避け方を判断する側の状態は、別の測定で補う必要があります。
ロコモ度テストの他の2つも実施したほうがよいですか。
ロコモ度として判定するのであれば必要です。ロコモ度テストは立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25の3つで構成され、最も進行している段階を判定結果とするため、2ステップテスト単独では「ロコモ度」は確定しません。ただし職場の体力チェックの目的が医学的な段階判定ではなく、作業に必要な体力の把握や本人の気づきにある場合は、通達が示す別添3の5項目のように、目的に合わせて項目を選ぶ考え方になります。

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