夜勤や交代勤務のあとは、反応や判断が鈍るのか。現場の感覚としては「そうだろう」と思えても、制度と研究が何を言っているかは、意外に整理されていません。この記事の結論を先に書くと、睡眠不足が反応の速さと正確さを落とすことは研究で報告されていますが、夜勤や交代勤務そのものの影響を、反応と判断に限って職場で測る方法は、国の指針にも示されていません。分かっていることと、分かっていないことを分けて整理します。
この記事で「反応」と呼ぶのは、合図を受け取ってから動き出すまでの速さ、「判断」と呼ぶのは、複数の選択肢から適切なものを選ぶことです。それぞれの意味は反応時間の種類と認知機能とは何かで整理しています。
夜勤・交代勤務は、どのような働き方か
夜勤は、一般に夜間の時間帯に働くことを指します。交代勤務は、日勤、夜勤などの勤務を、あらかじめ決めた順番で入れ替えながら働く形です。この記事では、夜間にかかる勤務と、勤務時間帯が入れ替わる働き方の両方を、まとめて扱います。
同じ夜勤でも、毎回夜間に固定されている場合と、日勤と夜勤が数日ごとに入れ替わる場合とでは、睡眠のとり方が大きく異なります。研究の結果を読むときも、職場の対策を考えるときも、まず自社の勤務がどの形なのかを確かめることが出発点になります。
指針は、夜勤と交替制勤務をどう扱っているか
高年齢者の労働災害防止のための指針(令和8年2月10日 公示第1号)は、作業管理の共通的な事項として、勤務形態や勤務時間を工夫して高年齢者が就労しやすくすることを求め、その例に、短時間勤務、隔日勤務、交替制勤務を挙げています。ここでの交替制勤務は、働き続けやすくするための選択肢として書かれています。夜勤を一律に危険と見なす書き方ではありません。
同日付けの通達(基発0210第1号)に添えられた自主点検のチェックリストには、もう少し具体的な項目があります。夜勤については、できる限り夜勤を避けること、夜勤をさせる場合には心身の負担を軽減するように夜勤のシフトや休日を調整することが、点検項目として挙げられています。
睡眠や疲労に触れた項目は、ほかにもあります。作業開始前に、睡眠不足や体調不良の有無を問いかけて健康状態を確認すること。運転の前に、疲労、飲酒、睡眠不足などで安全に運転できないおそれがないかを、問いかけやアルコールチェッカーなどで確認すること。長時間の走行や、深夜・早朝の時間帯の走行を避け、休憩や仮眠の時間に余裕を持たせた走行計画にすること。いずれも、勤務の組み方と、始業前の確認が中心です。
研究が示していること、示していないこと
睡眠不足と作業の成績の関係を調べた研究として、よく引かれるのが、Williamson と Feyer が2000年に Occupational and Environmental Medicine に発表した報告です。運輸業の従業員30名と陸軍の9名、合わせて39名を対象に、最長28時間の睡眠不足の間の成績と、血中アルコール濃度が最大で約0.1%になるまでアルコールを摂った後の成績を、同じ人で比べています。
報告によれば、17〜19時間起き続けた時点(実験では午後10時半から午前1時にあたる)で、いくつかの検査の成績は、血中アルコール濃度0.05%のときと同じか、それより悪くなりました。反応の速さは検査によっては最大で50%遅くなり、正確さの指標もこの濃度の場合より有意に悪くなったとされています。さらに長く眠らないでいると、成績は最大の濃度(0.1%)と同等の水準に達したと報告されています。
この研究から言えることには、限りがあります。次の点に注意が必要です。
- 調べられたのは「起き続けた時間」の影響であり、夜勤や交代勤務という働き方そのものを比べた研究ではない
- 対象は39名で、運輸業の従業員と陸軍の人だった。職種や年齢の異なる集団に、同じ大きさの影響が出るとは限らない
- 実験室で条件をそろえた検査の成績であり、実際の職場の事故や不調との関係を示したものではない
- アルコールとの比較は、成績が落ちる程度を伝えるための目安であり、睡眠不足の人が飲酒した人と同じ状態になるという意味ではない
交代勤務の影響をまとめた総説としては、Costa が2003年に Occupational Medicine に発表した概説があります。交代勤務や夜勤は、健康、安全、社会生活に対する危険因子として認識されていると述べたうえで、対策は主に、勤務表を人間工学的な基準で組むことと、特別な健康管理を行うことだとしています。ここでも、中心に置かれているのは勤務の組み方であり、反応や判断の測定ではありません。
確かめられているのは、睡眠不足が反応の速さと正確さを落とすことが報告されている、という範囲です。自社の夜勤の人の反応が、どの程度落ちるのかは、これらの研究からは分かりません。
自社の勤務を整理するための問い
研究の結果をそのまま当てはめるのではなく、自社の勤務の何が負担になりうるかを具体的に洗い出すところから始めます。次の問いは、通達のチェックリストの考え方にもとづいて、当社が整理したものです。
| 見る点 | 確かめること |
|---|---|
| 夜勤の形 | 固定か、日勤と入れ替わるか。連続して何日続くか |
| 勤務の間隔 | 勤務と勤務のあいだに、睡眠をとれる時間が確保されているか |
| 休日の取り方 | 夜勤の後に、休日が十分に挟まれているか |
| 始業前の確認 | 睡眠不足や体調不良を、本人が言い出せる仕組みになっているか |
| 作業の内容 | 夜間に、集中を保つ作業や、瞬時の判断を要する作業が集中していないか |
| 事故・ヒヤリハット | どの勤務の、どの時間帯に起きているか。偏りがあるか |
これらは、測定の結果を待たなくても確かめられます。勤務表と、事故・ヒヤリハットの記録があれば、多くの点は点検できます。そのうえで、なお本人の状態を数値で知りたい場面に限って、測定を補助的に使うという順序です。
高年齢の従業員の夜勤で、特に考えること
指針は、筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能及び認知機能の低下等を、高年齢者の特性として挙げています。そのうえで、勤務形態や勤務時間の工夫を求めています。夜勤そのものを禁じているわけではなく、本人の状況に応じて、働き方を選べるようにする考え方です。
夜勤を続けるか、日勤に移るか。どちらが適切かは、年齢だけでは決まりません。本人の希望、睡眠のとれ方、健康診断の結果、作業の内容を合わせて、産業医などの専門職を交えて話し合う形が望ましいといえます。測定の結果を、配置の決定に単独で使うことは勧められません。配置への使い方は、反応時間の記事でも触れています。
夜勤の影響を職場で見るとき、気をつけること
夜勤の前後で反応を測れば、影響が見えるのではないか。そう考えたくなりますが、解釈には注意が必要です。
| 気をつけること | 理由 |
|---|---|
| 時間帯をそろえて測る | 反応は時間帯によって変わりうる。日勤の人の昼の値と、夜勤の人の明け方の値を比べても、夜勤の影響とは言い切れない |
| 個人の中で比べる | 個人差が大きいため、他の人との比較よりも、同じ人の勤務前後や、勤務パターンごとの変化を見るほうが解釈しやすい |
| 1回の結果で判断しない | 体調や気分でも結果は動く。考え方は[[measurement-reliability-and-validity|測定の信頼性と妥当性]]で整理している |
| 慣れの影響を分ける | 繰り返し測ると、慣れで結果が変わることがある。[[practice-effect-what-it-is|練習効果]]の記事で扱っている |
測定の方法の選び方は認知機能の測定方法の種類で、労働安全での位置づけは反応時間の記事で扱っています。注意の働きと事故の関係は、注意機能の低下の記事で整理しています。
測る前に、勤務の組み方と始業前の確認を見直す
指針と総説に共通しているのは、人を測って選ぶのではなく、勤務の側を見直す考え方です。次の順で考えると整理しやすくなります。
- 自社の夜勤・交代勤務の形を整理する。固定か、入れ替わりか。連続の日数、勤務の間隔、休日の取り方はどうか
- 通達のチェックリストの項目に沿って、夜勤を減らせないか、シフトと休日の調整で負担を軽くできないかを点検する
- 始業前に、睡眠不足や体調不良を確認する仕組みがあるかを見る。問いかけは、本人が申告しやすい雰囲気があって初めて機能する
- ヒヤリハットや事故が、どの勤務の、どの時間帯に起きているかを整理する。ここで偏りが見えた場合に限り、対象を絞って測定を補助的に使うことを検討する
- 測定の結果は、個人を選別するためではなく、シフトや作業の割り当てを見直す材料として、本人と共有する

- ※ 本記事は2026年10月時点で公開されている資料にもとづいています。制度は改正されることがあるため、実施にあたっては最新の情報をご確認ください。
- ※ 通達のチェックリストの項目は、事業者が自主的に点検するためのものであり、義務を定めたものではありません。
- ※ Williamson らと Costa の研究は、掲載誌の抄録で確認できる範囲を紹介しています。測定や解析の詳細は原文をご確認ください。
- ※ 反応や判断の測定は、状態を数値として把握するためのものであり、事故や不調の予防を保証するものではありません。医学的な判断は医師・産業医等の専門職が行います。
よくある質問
- 夜勤をすると、反応は必ず遅くなりますか。
- 必ずとは言えません。研究で報告されているのは、睡眠不足の状態で反応の速さと正確さが落ちたという結果で、夜勤という働き方そのものを比べたものではありません。睡眠のとれ方や勤務の組み方によって、影響は変わると考えられます。
- 睡眠不足はアルコールを飲んだときと同じですか。
- 同じとは言えません。ある研究では、17〜19時間起き続けた時点の成績が、血中アルコール濃度0.05%のときと同じか、より悪くなった検査があったと報告されています。これは成績が落ちる程度を伝える目安であり、睡眠不足の人が飲酒した人と同じ状態であるという意味ではありません。
- 夜勤について、法律や指針で何が求められていますか。
- 高年齢者の労働災害防止のための指針は、交替制勤務などを工夫して就労しやすくすることを求めています。通達のチェックリストには、夜勤をできる限り避け、行う場合は心身の負担を軽減するようシフトや休日を調整する項目があります。チェックリストは自主点検用で、義務を定めたものではありません。
- 夜勤の前後に反応を測れば、影響が分かりますか。
- 時間帯の違いや個人差、慣れの影響があるため、1回の測定だけで影響を判断することは勧められません。同じ人を、同じ条件で、複数回測って変化を見るのが基本です。
- まず何から見直せばよいですか。
- 測定よりも、勤務の組み方と始業前の確認が先です。夜勤の回数や連続日数、勤務の間隔、休日の取り方を点検し、始業前に睡眠不足や体調不良を申告しやすい仕組みがあるかを確かめます。
- 高年齢の従業員は、夜勤を外したほうがよいですか。
- 年齢だけで決めることは勧められません。指針は、勤務形態や勤務時間を工夫して就労しやすくすることを求めており、夜勤を禁じてはいません。本人の希望、睡眠のとれ方、健康状態、作業の内容を合わせて、産業医などの専門職とも相談して判断します。
出典
- 高年齢者の労働災害防止のための指針(令和8年2月10日 公示第1号)[PDF]|厚生労働省(外部サイトが新しいタブで開きます)
- 「高年齢者の労働災害防止のための指針」について(令和8年2月10日付け基発0210第1号)[PDF]|厚生労働省(外部サイトが新しいタブで開きます)
- Moderate sleep deprivation produces impairments in cognitive and motor performance equivalent to legally prescribed levels of alcohol intoxication(Williamson ほか、Occupational and Environmental Medicine 57巻10号、2000年)|PubMed(外部サイトが新しいタブで開きます)
- Shift work and occupational medicine: an overview(Costa、Occupational Medicine 53巻2号、2003年)|PubMed(外部サイトが新しいタブで開きます)
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