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Health Management

健康経営優良法人の申請では、測定をしたかどうかよりも、何のために測り、その結果をどう使ったかが問われます。認定要件の構成から、測定データが関わる場所を確かめます。

健康経営・従業員の認知機能測定

健康経営の担当者から、従業員の体力や反応を測ると健康経営優良法人の評価につながるのか、という質問をいただくことがあります。答えは「測っただけでは評価されないが、使い方次第で関わる項目はある」です。

この記事では、健康経営優良法人認定事務局が公開している健康経営優良法人2027の認定要件と、中小規模法人部門の申請手引書(申請のポイント)をもとに、評価項目の全体像と、測定データが位置づく場所を整理します。なお、ここでいう「測定データ」は、体力測定や反応・判断の測定など、従業員の状態を数値で記録したものを指します。健康診断やストレスチェックのように法律で実施が定められたものとは区別して扱います。両者の違いは従業員の反応・判断を測るとはで整理しています。

健康経営優良法人2027の認定要件の全体像

健康経営優良法人は、大規模法人部門と中小規模法人部門の2部門で構成されています。どちらに該当するかは業種と従業員数などで決まり、たとえば会社法上の会社で製造業その他の場合、従業員数301人以上が大規模法人部門、1人以上300人以下(または資本金3億円以下)が中小規模法人部門です。大規模法人部門の認定を受けるには、中小規模法人部門の申請書とは別の健康経営度調査に回答する必要があります。

評価項目は、両部門とも次の5つの大項目に分かれています。

大項目主な評価項目(2027年度)測定データとの関わり
1.経営理念・方針健康宣言の社内外への発信。大規模法人部門のホワイト500では、従業員パフォーマンス指標及び測定方法の開示が必須ホワイト500では、指標と測定方法そのものを開示する
2.組織体制健康づくり責任者・担当者の設置、産業医・保健師の関与、保険者との連携など直接の関わりは小さい
3.制度・施策実行健康経営の具体的な推進計画(必須)と、①〜⑰の評価項目。⑩に高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取り組みがある推進計画の指標、⑩の取り組みの選択肢、⑬運動機会の増進などで関わる
4.評価・改善大規模法人部門は健康経営の実施についての効果検証、中小規模法人部門は健康経営の取り組みに対する評価・改善(いずれも必須)取り組みの前後を比べる材料になりうる
5.法令遵守・リスクマネジメント定期健診の実施、50人以上の事業場でのストレスチェックの実施、労働基準法または労働安全衛生法に係る違反による送検がないことなど(自主申告)法定の健診・ストレスチェックが前提になる

3の①〜⑰は、すべてを満たす必要はありません。大規模法人部門は①〜⑰のうち14項目以上です。中小規模法人部門は、①〜③のうち2項目以上、④〜⑩のうち2項目以上、⑪〜⑰のうち4項目以上が求められ、ブライト500・ネクストブライト1000は①〜⑰のうち16項目以上です。どの項目を選ぶかは法人が決めることになります。

最も直接に関わる項目:高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取り組み

測定データと最も近いのが、⑩「高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取り組み」です。大規模・中小規模の両部門の認定要件に含まれています。中小規模法人部門の申請のポイントによれば、申請書のこの設問では、高年齢従業員特有の健康課題に特化した取り組みを、複数の選択肢から当てはまるものすべて選ぶ形式になっています。

選択肢には、身体機能を補う設備・装置の導入や職場環境の見直し、ヒヤリハット事例などからの危険マップの作成と周知、体力や体調に応じた業務負担の配慮や作業管理、高年齢従業員を対象とした教育やセミナーなどと並んで、「加齢による運動機能のチェック(体力測定、転倒等リスク評価セルフチェック、フレイル・ロコモのチェック等)を定期的に行っている」が挙げられています。ここでは「定期的に」という語がついている点が要になります。一度だけの測定会ではなく、続けて行っていることが前提です。

また、申請のポイントは、高年齢従業員の年齢を、従業員の体力や身体機能の低下等の状況に応じて自社で定義してよいとしています。何歳以上を対象にするかを、制度が一律に決めているわけではありません。

この項目は、労働安全衛生の制度ともつながっています。令和8年4月1日から適用されている高年齢者の労働災害防止のための指針は、事業者が考慮すべき特性として、筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能及び認知機能の低下等を挙げています。指針の解釈を示した通達は、体力チェックの範囲に、事業場の実情に応じて感覚機能や認知機能等を含めて差し支えないとしています。体力チェックの考え方は高年齢労働者の体力チェックで詳しく扱っています。

なお、申請のポイントは、具体的な取り組みの参考として厚生労働省の「エイジフレンドリーガイドライン」を挙げています。このガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)は令和8年4月1日に廃止され、現在は上記の指針が定められています。社内で取り組みを設計するときは、現行の指針を確認してください。

推進計画の指標と効果検証で、測定データをどう扱うか

もう一つの関わりが、必須項目である「健康経営の具体的な推進計画」と、大項目4の評価・改善です。申請書では、解決したい課題、期初に計画した取り組み、目標と達成予定年度、効果を測る指標とその現状値を書くことになっています。課題のテーマの選択肢には、生産性低下防止・事故発生予防(肩こり、腰痛等筋骨格系の症状や、睡眠不足の改善、転倒予防等)も含まれています。

申請のポイントは、指標として認められない例を具体的に示しています。測定データを指標に使うときに関係するのは、次の点です。

  • 判断者の主観による定性指標は認められない。客観的に測定可能な指標を目標指標とすることが求められている
  • 健康経営の推進と関連性が薄い指標は認められない。例として、売り上げの向上や交通事故発生予防などが挙げられている
  • 取り組みとの関連が著しく離れた指標は認められない
  • 健康経営として従業員個人の健康指標を目標とする場合は、法人として従業員の目標の達成状況等を把握・管理する必要がある
  • 特定の従業員個人の数値を例に用いて社内に周知するなど、プライバシーへの配慮に欠ける計画は認められない

つまり、測定の数字は、それ単独ではなく、取り組みとの対応がはっきりしていて初めて指標になります。たとえば「転倒につながる作業環境の見直し」を取り組みにするなら、指標は見直しの対象とした作業に関わるもの、という具合です。個人の結果を並べるのではなく、集団としての傾向や、取り組みの対象者のうち測定を受けた人の割合など、法人の単位で扱える形にしておく必要があります。

取り組みの前後で数字を比べるときには、測定そのものの性質にも注意が要ります。同じテストを繰り返すと慣れで結果が良くなる練習効果があり、条件をそろえないと値はぶれます。測定の数字をどこまで信じてよいかは測定の信頼性と妥当性で整理しています。前後の差が、取り組みによるものなのか、慣れや測定のぶれによるものなのかを区別できる設計にしておくことが、効果検証の前提になります。

申請の前に確認しておくこと

最後に、測定データを申請に使う場合の実務上の注意をまとめます。いずれも申請のポイントに書かれている事項です。

  1. 回答できるのは、2025年4月1日から申請日までに実施した内容。実施が決まっていても、申請日より後に行うものは書けない(2027年度の中小規模法人部門の申請期間は2026年10月16日まで)
  2. 一部の事業場だけでなく、法人単位での取り組みとして答える
  3. 回答した取り組みを説明できる資料を、申請期間最終日から2年間保存し、提出を求められたら1週間以内に対応する。測定を行った記録や実施の案内も、その資料に含まれうる
  4. 測定結果は健康情報として扱う。指針は、健康情報等の取扱いについて、本人の同意の取得方法や情報の取扱方法等の事業場内手続を定めることを求めている

3番目は見落とされやすい点です。「定期的に行っている」と回答したのであれば、いつ、誰を対象に、何を測ったのかを後から示せる形で残しておく必要があります。測定の記録は、評価のためだけでなく、申請内容の裏付けとしても使われることになります。

  • ※ 本記事は2026年11月時点で健康経営優良法人認定事務局が公開している、健康経営優良法人2027の認定要件(大規模法人部門・中小規模法人部門)と、中小規模法人部門の申請のポイント(令和8年8月)にもとづいています。認定要件は年度ごとに見直されます。
  • ※ 大規模法人部門の健康経営度調査票の設問は、本記事では扱っていません。大規模法人部門で申請する場合は、調査票と関連資料をご確認ください。
  • ※ 認定の可否は、認定委員会と認定事務局の審査で決まります。本記事は、特定の取り組みが認定につながることを示すものではありません。

よくある質問

体力測定をすれば、健康経営優良法人に認定されますか。
測定だけで認定されることはありません。認定要件は5つの大項目と多数の評価項目で構成されており、必須項目に加えて、制度・施策実行の評価項目から一定数以上を満たす必要があります。体力測定などの定期的な実施は、高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取り組みの選択肢の一つとして挙げられているものです。
高年齢従業員は何歳以上を指しますか。
中小規模法人部門の申請のポイントは、従業員の体力や身体機能の低下等の状況に応じた年齢を自社で定義してよいとしています。制度が一律の年齢を定めているわけではありません。
反応や判断の測定も、体力測定と同じように扱えますか。
申請書の選択肢に挙げられているのは、体力測定、転倒等リスク評価セルフチェック、フレイル・ロコモのチェック等の運動機能のチェックです。一方、高年齢者の労働災害防止のための指針に関する通達は、体力チェックの範囲に感覚機能や認知機能等を含めて差し支えないとしています。どの選択肢に当てはまるかは取り組みの内容によるため、申請の前に申請書の記載と照らして確認してください。
測定の結果を推進計画の指標にできますか。
客観的に測定可能で、取り組みと関連のある指標であれば、指標として扱える可能性があります。申請のポイントは、主観による定性指標や、取り組みとの関連が著しく離れた指標は認められないとしています。個人の数値を目標にするのではなく、法人として把握・管理できる形にしておく必要があります。

出典

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